紳士の豆知識!なぜ、フォーマルウェアは黒いのか

礼服は、着ることで相手への誠意を示すものですが、世界共通の正礼装であるモーニングコートやタキシード、さらに日本独自の礼服であるブラックスーツなど、格式高いフォーマルウェアはなぜどれも「黒」色なのでしょうか。今回はその謎に迫りたいと思います。

日本でのお話「まさか、それだけの理由!?」

諸説ある中で、ちょっと驚きの説を紹介します。

フォーマルウェアはヨーロッパから入ってきた文化です。洋装文化の影響を受けるまでの日本は、特に礼服が「黒」とは統一されておらず、今では想像し難いですが、喪服に関してはなんと「白」色の着物が一般的でした。

しかし、明治時代以降、戦争で死者の葬儀が増え喪服の利用頻度が増えると、汚れが目立つ白色の着物が不便に感じられ、生地の色は、汚れが目立たない黒がよしとされはじめたそうです。

この風潮の変化に加え、徐々に浸透してきた洋装のフォーマルウェアが黒色だったことで、

それなら、慶事でも弔事でも、和装でも洋装でも、礼装と言えば黒色にしてしまおう!

となったのが、今日の「正式な礼服は黒色」となった所以だということです。

また、平安時代にも一時期、喪服は白から黒に変わった時代があったこともわかっています。

つまり、日本においてフォーマルウェアが黒いのには、黒色に込められた特別な思いが昔ながらにして存在していたわけではなく、白と黒と繰り返しやってみて、利便性や時代の流れ的に、「黒」が定着した・・・ということになります。

深い所以があると期待していた人からしたら、なんだか肩透かしを食ったような気持ちになってしまいますね。

ヨーロッパまで遡った場合のお話「なるほど、そういう理由待ってました!」

一方、フォーマルウェア発祥の地、ヨーロッパのフォーマルウェアの歴史を遡ってみると、フォーマルウェアが「黒」色になったそれらしい諸説に触れることができます。

フランスのとある王妃が、王が亡くなった時に、永遠に変わらない愛を示すために、何色にも染まらない黒い服を一生着用したことで、黒い服が他人に礼を尽くすものとして認知されたという説。

逆に、とある王妃が、自身の白いドレスを目立たせるために、周りの仕える人々に黒い服を着用するように命じ、それを見ていた王妃に気に入られたい貴族が、自ら黒い服を着用し、敬意を示していたことが始まりといった説など。

両説ともあり得そうな納得がいく説です。
しかし、前者は自発的な善意によるもので、後者は強要かつ媚び精神によるものと、対象的ですね。

まとめ

諸説ある中で、あなたはどれを信じますか。

筆者は、永遠の愛を示すために黒い服を着たのが、礼服が黒色になったはじまりであると信じています。また、和装でも黒着物を着ることが定着したのは、汚れ云々だけの理由ではなく、この西洋の精神に共感できたからだとも信じています。

なぜなら、洋装でも和装でも礼服の黒色は、実際に見るとわかりますが、黒というよりも真っ黒です。実は、真っ黒だと浅めの黒や他の色に比べると、逆に食べかすや子どもの鼻水やよだれなどによる汚れが目立ってしまいます。
それなのに、生地の色が真っ黒な色で定着したというのは、何よりも「何色にも染まらない相手への誠実な想いを表現する」ことに礼服の重点が置かれたからだと考えると理解ができるのです。

着るだけで気持ちを代弁してくれる礼服。やはり礼服の「黒」は強い誠意の現れなのではないでしょうか。